旧ソ連で作られた“最後の重戦車”と言われるのがJS(Josef
Stalin−スターリン)です。
元来JS-8と呼ばれていましたが、スターリンの死後、彼の「粛清」に対する批判が高まったために
T−10と改称されたとのこと。
従って厳密に言えばT−10は「スターリン戦車」ではないのですが、旧ソ連の“重戦車”を示す
固有名詞、戦車モデルの商品名としてはとても相応しいものに感じられます。
初版はなんと1964年! シングルモーターライズキットとして登場しましたが、68年にはリモコン版も
登場。長らくファンに愛されたキットです。
田宮のこのプラモデルで「ソ連にはスターリンという怪物みたいな戦車があるんだ」と知った少年も、
今や社会の第一線で活躍するオトーサンです。
ソ連という国がまだまだ分厚い鉄のカーテンの向こう側に隠れてよく見えなかった時代。
プラモデルを設計するにも、まとまった資料はなかなか手に入らなかったことでしょう。
そんな悪条件の中、極めて少ない資料を元に、なんとかしてこの「陸軍大国ソ連最後の重戦車」の偉容
を模型で再現しようとする模型メーカーの人々の姿が想起されるような、逞しいフォルムを持っています。
赤い透明プラスチック部品は赤外線ライトのレンズ。当初これはムギ球を入れて走行中に点灯するギミックが仕込まれていました。
ギヤは頑丈なメタルフレームの中で組み替えることによって走行スピードの変更が可能。
スプリングはサスペンション用。精密なミリタリーミニチュアシリーズが始まった後も、この重戦車
は店頭に生き残っていました。当時は他の新キットとは風情の違うゴム製キャタピラやスプリングによって
可動するサスペンションに物珍しさを感じたものです。
ワルシャワ条約機構軍のマーキングをあしらったデカール。今となってはミステリアスな味わいがあります。
ノスプラ、そしてBANANA GUYsの常連、いつもお世話になっているT.M.さんよりご提供いただいた、
キット発売当時の少年誌に掲載された広告。
当時、こんなビジュアルに胸を躍らせた少年たちが日本中に大勢いたことでしょう。