1935年式グロッサー・メルセデスベンツのモーターライズキットです。
もともとはフジミが発売していた日本の皇室の「天皇御料車」のキットですが、菊の御紋章などの部品を
廃してドイツ軍特有のデカール等を付属させることによって、軍用車のキットとして甦りました。
ちなみに高荷義之画伯によるこの箱絵。背景に並ぶドイツ戦車部隊の中に、よ〜く見ると「お遊び」で、
とある戦後型米軍戦車が紛れ込んでいる……というのは、マニアには有名なお話ですね!
このキット、少年時代に確かに見た覚えがあるのです。
しかし、しばらくはマルイが発売していた1/35アドルフ・ヒットラー専用車グロッサー・ベンツのキットと
記憶がゴチャ混ぜになっていました(^^;)
あの当時はちょっしたミリタリーブームで、各社こぞってこういった製品をリリースしていましたから、
記憶が曖昧になってしまっていたんです。
しかし10年ほど前にアンティークショップでこのキットを見つけて、ようやく自分の記憶を整理することができました。
フェンダーの曲面など、クラシカルで美しいデザインを損なわず綺麗にまとめた部品や、
極小のギヤボックスとウォームギヤを使って本来の形状に破綻をきたさないように配慮しつつ
モーターライズ化してあるなど、フジミの意気込みが感じられます。
細い窓枠、ラジエーターグリル、サイドステップ等、実車がメッキ仕上げだったりモールの張り巡らされている
部分には、美しいメッキ部品が用意されていました。
ボディの成形色もしっとりとした黒、タイヤはゴム製なので、初心者が塗装をせずに組み立てても見栄えのする
出来上がりが期待できたのではないでしょうか。
デカールも将軍旗、国防軍と武装親衛隊のものがキッチリとセットされています。
日本のミリタリーモデルが、質的にも飛躍的に向上し始める直前の頃の、ユニークなキットです。
(文責:TAC宮本)